医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
資料
HBs抗原検査における偽陽性の検討
紙田 晃眞田 かおり玉井 佑弥川本 光江杉山 満美
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 70 巻 3 号 p. 560-565

詳細
抄録

B型肝炎ウイルス外被抗原(HBs抗原)検査を行う中で,初回の検査結果と確認試験の結果が乖離する検体に遭遇することがある。そこで,我々は初検値が0.05 IU/mL以上10 IU/mL未満でありかつ最終結果として陰性で報告した検体を偽陽性,陽性で報告した検体を真の陽性と定義した。そして,偽陽性の症例を明らかにし,偽陽性例と真の陽性例との初検値,HBコア抗体(HBc抗体)とHBs抗原を比較することを目的とした。対象は12,407例である。初検で陽性となったのは162例であり,初検値が0.05 IU/mL以上10 IU/mL未満であった55例に対し確認試験として高速遠心後の再検,さらにそのうちの21例に対し中和試験を行った。偽陽性は39例,真の陽性は16例であった。偽陽性39例の内訳として,高速遠心後の再検で陰性化したのは30例,中和試験で陰性化したのは9例であった。偽陽性例と真の陽性例との間で初検値に有意差はなかった。確認試験を行った55例のうち,7例でHBc抗体の検査データが得られた。4例がHBs抗原陰性かつHBc抗体陰性,1例がHBs抗原陽性かつHBc抗体陽性,2例がHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性であった。以上から,HBs抗原検査における偽陽性例は当院でも認められ,また初検値から偽陽性か真の陽性かの判断はできず,このことから確認試験は正確な結果報告のために重要であると考えられた。また,HBc抗体はHBs抗原偽陽性判断の一助になると考えられた。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top