2021 年 70 巻 3 号 p. 595-601
緑膿菌は湿潤環境中に棲息し,病原性が低く健常者には感染しても症状が出ることはほとんどない。しかし,免疫力の低下した易感染者には日和見感染症を引き起こすことがある。感染経路として,カテーテル汚染などによる外因性感染や患者腸管内に棲息する緑膿菌による内因性感染がある。緑膿菌は緑膿菌感染症の重症・難治化の原因となる種々の病原因子を産生する。漢方薬である麻黄湯は抗インフルエンザウイルス作用が報告されている。しかし,麻黄湯による緑膿菌の病原因子に対する影響についての報告はない。そこで,本研究では,麻黄湯による緑膿菌(PAO1株)の病原因子に対する影響をin vitroで検討することを目的とした。今回,増殖速度,biofilm形成能,motility(swarming, swimming, twitching),total proteaseと,ヒト結腸癌由来細胞caco-2を用いた内因性感染の確立に重要な細胞侵入性の検討を行った。増殖速度は麻黄湯添加により,4,8時間にて抑制を認めたが各検討に用いた18時間以降では抑制を認めなかった。swarming motilityでは61%,total proteaseでは15%の抑制を認め,細胞侵入性においても有意な抑制を認めた。