医学検査
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原著
深部静脈血栓症における血栓部位および血栓病期とD-dimer値との関連性
吉岡 明治下村 大樹北川 孝道嶋田 昌司松尾 収二上岡 樹生
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2021 年 70 巻 4 号 p. 639-646

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抄録

深部静脈血栓症(DVT)診断のために,下肢静脈超音波検査およびD-dimer検査が同一期に施行された825症例を対象に,DVTの有無,血栓部位および血栓病期におけるD-dimer値の検討を行った。DVTは216例(26%)に認め,血栓部位は中枢型85例,末梢型131例,血栓病期は急性期56例,慢性期160例であった。DVT群と非DVT群のD-dimer中央値は,それぞれ8.8 μg/mLおよび2.1 μg/mLであり(p < 0.001),D-dimerが基準範囲を示した137例は全例DVTを認めなかった。血栓部位ならびに血栓病期におけるD-dimer中央値は,中枢型と末梢型がそれぞれ9.8 μg/mLと7.6 μg/mL,急性期と慢性期は10.0 μg/mLと7.9 μg/mLであり,いずれも有意差を認めなかった。外来および入院別にみると,外来は急性期例が慢性期例に比べてD-dimerの有意な高値を認めた(p = 0.003)。さらに,血栓変化とD-dimerの経時変化を調べたところ,血栓増大がなかった症例のD-dimerは経時的な減少を呈した。これらの結果により,D-dimerは血栓の除外に有用であり,外来症例において血栓病期推定の一助になると考えられた。一方,D-dimerはDVTに対する特異度が低いことから,定量値のみでなく経時的な変動を注視することが血栓の状態を判断する上で有効と考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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