医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
資料
ヘマトキシリン・エオジン染色標準化への試み―中部圏内各施設において病理技師・病理医が最適とする色調について(アンケート結果のまとめ)―
柚木 浩良藤田 智洋迫 欣二浅野 敦菊地 良介岡田 元中根 生弥
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2022 年 71 巻 1 号 p. 120-129

詳細
抄録

病理診断は治療方針の決定と直結しているため,標本の作製には高精度な技術が求められる。病理診断の根幹であるヘマトキシリン・エオジン染色(以下HE染色)は最も重要な技術の一つであるが,染色工程は各施設多種多様であること,色調の客観的評価が難しいこと,基準となる指標がないことなどから,安定した結果を得ることが困難とされている。また,施設間で染色性が相違し,各施設で異なる染色標本を使用していることも事実である。より正確な診断のためには安定した染色結果を得ること,施設間の相違を解消して,どの施設においても同水準の検鏡ができるよう色調の標準化が不可欠と考える。そのための第一歩として,中部圏内の各施設に標本画像(平成28年度,平成29年度に愛知県臨床検査技師会精度管理調査で用いた標本の画像)を添付ファイルにて送付し,病理技師,病理医の評価を求めた。具体的には,染色の色調が異なる標本画像の中から最も好みとする標本を選択し,その結果をメールにて返信してもらった。各施設のデータを集計した結果,一番多く選ばれた標本の色調や,同一施設内の技師間でも個人差が確認された。さらに,病理医の方が病理技師よりもエオジンの濃い色調を好む傾向があった。今回の調査から好まれるHE染色の色調の範囲が概ね把握できた。本調査結果がHE染色の標準化推進に向けての一助になればと考える。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top