医学検査
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原著
フグ毒テトロドトキシンに対する新規ELISA測定系の構築
岡田 光貴福田 篤久竹下 仁
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2022 年 71 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

テトロドトキシン(TTX)が原因の食中毒は近年においても見られるが,TTXの測定を目的とした臨床検査は実施されていない。そこで,我々はTTXの検出と定量に有用な酵素結合免疫吸着法(ELISA)の構築を試みた。まず,TTXに対する抗体を用いて構築したELISAにより,TTXの希釈系列を測定し,検量線を作成した。その結果から,ELISA構築における測定性に優れた2種類の抗体の組み合わせを決定した。次に各種溶媒で100 μg/mLに調製したTTX試料14本を同時測定した。クエン酸緩衝液で希釈したTTX試料の測定結果はばらつきが少なく,概ね正確な測定が可能であった。一方,尿試料で平均37.36 μg/mLと調製濃度よりも低く,血清試料で平均249.86 μg/mLと高いTTX濃度が算出された。この結果は試料中の共存物質が影響していると思われたため,尿や血清で調製したTTX希釈系列を測定,その結果から検量線を作成し,補正を試みた。その後,TTX試料14本の同時測定の結果は,尿試料では調製TTX濃度に近づいたが,血清試料では平均162.92 μg/mLであり,調製濃度との乖離が見られた。そこで,TTX調製血清を除タンパク処理した試料の測定を試みた結果,平均111.29 μg/mLと改善が認められた。検体の前処理法や測定工程には課題が残るが,本ELISAは生体試料中TTXの測定にある程度有用と思われた。

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© 2022 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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