医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
頭頸部脱分化型腺様嚢胞癌の4例
神月 梓原田 博史龍 あゆみ棚田 諭井戸田 篤山﨑 知行中塚 伸一本間 圭一郎
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2022 年 71 巻 2 号 p. 356-361

詳細
抄録

背景:腺様嚢胞癌は緩慢な発育と長い臨床経過を特徴とするが,脱分化を伴う腺様嚢胞癌は急激な経過を辿り,その予後は低悪性や高悪性症例と比較して不良である。今回,当院で経験した頭頸部脱分化型腺様嚢胞癌4例について報告する。症例:患者は38~78歳の男女で,組織診材料では低悪性成分と著しい異型や多形性,壊死を伴う高悪性成分が混在しながら単一の病変を形成する像を認め,広範な壊死を伴う大型の充実性胞巣が多く認められた。腫瘍の大半を低分化ないし未分化な成分が置換していたため,細胞診材料のほとんどは高悪性成分が観察され,腺様嚢胞癌の特徴的所見に乏しかった。今回,細胞像を再検討した結果,篩状構造や管状構造を示す部分が認められた。他の高悪性の癌腫との鑑別が問題になった場合は,このような所見を丁寧に観察することが重要であると考えられた。また,高悪性症例と脱分化症例の鑑別に細胞診材料が役立つと報告されている。今回の4例でも異型や多形性の度合い,核腫大,明瞭な核小体,狭小~中等量の細胞質などの細胞所見は文献に合致していた。細胞診材料が腫瘍の部分像である点に注意を要するが,このような差異を認識することは重要であると考えられた。結語:高悪性成分の存在を細胞診で指摘することは,後日の組織検体の検索において診断上有益な情報を与え,かつ病理医が脱分化成分を明確に認識する意味でも細胞診の果たす役割は大きい。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top