医学検査
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技術論文
当院で経験した重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の8症例
山谷 由香里清重 篤志佐々木 瞳大井 幸子吉岡 豊道和田 進
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2023 年 72 巻 3 号 p. 374-381

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抄録

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome; SFTS)は,マダニが媒介するSFTSウイルスによって引き起こされる新興感染症である。中国をはじめ,東南アジア地域でも感染が確認されるようになり,特に本邦では西日本に偏在し分布している。今回我々は2019年6月から2021年7月の間に,島根県西部地区を医療圏域としている当院にて,核酸増幅検査でSFTS罹患が確定した患者8症例(2019年に2例,2020年に1例,2021年に5例)を経験した。これらの診療録を後方視的に,臨床背景,血液学的検査所見,治療および経過について検討した。結果として,SFTSの罹患が疑われた地域の多くは,人家が少なく田畑や野山の多い地域であるが,住宅や商店が集まっている地域も認められた。またマダニだけでなく猫や犬を介しての感染が疑われる症例も経験した。全症例での合併症は4症例に認め,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全,ウイルス性心筋炎,血球貪食症候群と多彩であった。しかしながら,重症例及び軽症例の血液学的検査所見を比較するも,有意な差は認めなかった。確定診断は地方衛生研究所に依頼するため,SFTS疑い患者発生時に迅速に対応できるように,対応マニュアルを分かりやすく改訂した。

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© 2023 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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