医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
資料
フローサイトメトリークロスマッチにおける2施設間の比較検討
丸山 美津子坂倉 立紀金本 人美橋口 裕樹西川 晃平松本 剛史大石 晃嗣
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 72 巻 3 号 p. 407-412

詳細
抄録

フローサイトメトリークロスマッチ(flow cytometry crossmatch; FCXM)は腎移植術前の組織適合性検査として広く行われている。しかしFCXMの操作手順・判定基準は標準化されていないため各施設において異なり,Quality Controlも充分とは言えない。今回,当院におけるFCXMの検査精度を検証し,施設間差を是正するため,当院と福岡赤十字病院にて施行した生体腎移植術前44症例のFCXMの判定結果を比較し,結果に乖離を認めた症例についてはその原因を検討した。福岡赤十字病院を基準とした当院のT-cell陽性および陰性一致率はともに100%(44/44)であった。B-cellでは陽性一致率100%(7/7)に対し,陰性一致率は86.5%(32/37)であった。判定に乖離を認めた5症例のうち2症例でドナー特異的抗体(donor specific antibody; DSA)を認めたが,2症例ではnon-DSAのみ,1症例は抗HLA抗体陰性であった。DSAが陰性であった症例では,pronase処理が未実施であったことが偽陽性につながったと考えられた。FCXMの両施設での一致率は比較的良好であったが,pronase処理を実施していないFCXMにおいて,B-cell弱陽性の結果が得られた場合は偽陽性の可能性も考慮し,抗HLA抗体同定検査の結果も併せて評価する必要がある。

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top