2023 年 72 巻 3 号 p. 358-364
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome; APS)は,患者血中に抗リン脂質抗体群(antiphospholipid antibodies; aPLs)が出現することにより,動・静脈血栓症や妊娠合併症など多彩な合併症を発症する自己免疫疾患であるが詳細な病態発症機序は未だ解明されていない。本研究では,患者血漿から精製したIgG-aPLsを用いて血栓形成や血管炎症に関与する単球及び顆粒球にaPLsがどのような作用を及ぼすか検討した。その結果,単球をIgG-aPLs存在下で培養することでCD14+/CD16+活性化単球の割合が増加することを確認した。さらに,炎症マーカーである顆粒球表面CD44抗原の強陽性分画及びCD44 v6発現が増強することを見出した。加えて,IgG-aPLs刺激により,顆粒球の各種基質(fibronectinやcollagen I・IV)への接着性が増すことを確認した。CD14+/CD16+単球は炎症性疾患や自己免疫疾患と関連が深いことが報告されており,IgG-aPLs刺激によるCD14+/CD16+単球の増加がAPSの病態形成に関与している可能性が示唆された。さらに,顆粒球はIgG-aPLs刺激により炎症状態が惹起されることに加え,生体内では血管内皮細胞などへの接着能も増し,血栓へ向かう“向血栓傾向”を有するようになると推測される。