2023 年 72 巻 4 号 p. 605-613
Streptococcus agalactiae(Group B streptococcal; GBS)は高齢者や基礎疾患を有する成人の侵襲性感染症の原因菌として報告が増加しており,死亡率は8.47~11.58%程度と報告されている。中でも菌血症患者は非菌血症患者に比較して致死率が高いことが知られているが,GBS菌血症のみに着目した報告は少ないため,GBS菌血症を後方視的に解析した。2015年1月から2021年12月にかけて血液培養が陽性となったGBS菌血症の15歳以上の症例を対象とした。期間中にGBS菌血症を呈した症例は69症例であり,60歳以上に多く発生(88.4%)し,特に糖尿病(33.3%)や肝硬変(23.1%),悪性腫瘍(18.8%)の存在が発症に関連していた。また,尿路感染症(27.5%)や皮膚軟部組織感染症(27.5%)を起因としたGBS菌血症やフォーカス不明の血流感染症(24.6%)によりGBS菌血症が多く発生しており,死亡率は8.7%であった。GBSの薬剤感受性試験結果ではマクロライド系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬に耐性を示す株が多く,多剤耐性PRGBSの症例についても2例認めた。PCGはGBS菌血症の第一選択薬として十分な効果は期待できるが,一方でPRGBSの存在もわずかではあるが考慮しなければならないことが明らかになった。