医学検査
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原著
末梢血塗抹標本スクリーニングにおける深層学習法を用いた幼若顆粒球認識の試み―血球形態分類における畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能モデルの可能性―
野坂 大喜櫛引 美穂子鎌田 耕輔山形 和史
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2024 年 73 巻 1 号 p. 69-77

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抄録

深層学習は人間の脳神経回路を模倣した多層のニューラルネットワークを持つ機械学習法の1つである。数十から数百回の反復学習によって,潜在的な特徴量を自動的に鑑別し,正確で効率的な判断モデルの生成を可能とする。末梢血中への幼若顆粒球や芽球の出現は造血器疾患鑑別の重要な指標であり,精度の高い自動スクリーニング技術の確立が必要とされる。本研究では,畳み込みニューラルネットワークを用いて幼若顆粒球認識人工知能モデルを生成する際の学習条件を検討し,生成した人工知能モデルの有用性を評価した。18層から152層までの5種類のResNetモデル,6727枚のラベル付き有核血球画像,8種類のOptimizerを用いて,転移学習とFine-tuningを行い,最適な重み付けがなされた幼若顆粒球認識人工知能モデルを生成した。転移学習後のモデルを用いて,健常人25例と幼若顆粒球症例25例を対象とした臨床評価を行った。全血球認識精度の最低-最大値は健常人症例で0.9131–0.9788,幼若顆粒球症例で0.8177–0.8812であった。畳み込みニューラルネットワークを用いた幼若顆粒球認識人工知能モデルは,健常人で97%,幼若顆粒球症例で88%以上の高い精度を有することが明らかとなった。本モデルは末梢血塗抹標本スクリーニングにおける形態鑑別支援技術として有用であると考えられる。

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© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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