2024 年 73 巻 3 号 p. 493-499
プロラクチン(prolactin; PRL)の存在様式の一つとして,主に自己抗体であるIgGとPRLが結合したマクロPRLといったものがある。マクロPRL自体は生理活性を有していないが,血中に存在すると,PRLの免疫学的測定において,マクロPRLを測りこむことで,PRL濃度が偽高値を呈し,治療が必要な高PRL血症と誤診され,不要な検査や治療につながる危険性を含んでいる。今回,マクロPRLとの反応性を軽減させる目的で開発された「AIA-パックCL プロラクチンII(東ソー株式会社)」の性能評価を行った。併行精度,室内再現精度,希釈直線性,干渉物質の影響に関して,いずれも良好な結果が確認された。現行のPRL試薬である「AIA-パックCL プロラクチン(東ソー株式会社)」との相関性は,回帰式y = 1.01x + 0.12相関係数r = 0.992(n = 100)といった結果となった。本試薬での測定値が,現行試薬での測定値を基準として,測定値の差が20%以上低く乖離した2例をPEG処理試験,ゲル濾過分析で解析した結果,どちらもマクロPRLを有しており,本試薬は現行試薬に比べてマクロPRLを測りこまないことが確認された。マクロPRLを有している患者が高PRL血症と誤診され,不必要な治療や手術を受けたケースがいくつか報告されている。本試薬を臨床で使用することで,マクロPRLが血中に存在した場合でも高PRL血症と診断されることが少なくなり,不必要な検査や治療を避けることが可能になると考えられた。