2024 年 73 巻 4 号 p. 652-660
C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus; HCV)抗体検査未受検者の受検率向上と効率化のために,大学病院を受診する患者における無症候性HCV感染早期発見に有用な基礎的資料を提示することを目的とした。研究デザインは単施設横断研究である。解析除外基準を満たす患者を除き,最終解析対象者は6,945人である。大阪大学医学部附属病院の電子カルテデータを用い,性別,年齢,入院外来区分,血液検査データおよび保有傷病名を収集した。血液検査データは患者が入院時や手術前検査として実施する基本的検査項目とし,無症候性HCV感染患者とHCV抗体陰性患者において収集した項目について統計学的に群間比較した。HCV核酸(HCV ribonucleic acid; HCVRNA)定量検査陽性を目的変数とした2項ロジスティック回帰モデルを用いて,単変量および多変量解析を行った。説明変数には,性別,年齢,入院外来区分,血液検査データおよび保有傷病名を用いた。解析の結果,性別,入院外来区分,クロール,クレアチニン,C-反応性蛋白を除く項目で2群間に有意差がみられ,無症候性HCV感染と関連する項目として高齢,外来患者,血小板数低下,アルブミン低下および総蛋白上昇が挙げられた。これらの結果より,大学病院を受診する患者において,無症候性HCV感染と関連する要因として,高齢,外来患者,血小板数低下,アルブミン低下および総蛋白上昇が可能性として示唆された。