医学検査
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全国済生会臨床検査室におけるヒヤリ・ハット/インシデント/アクシデント報告の実態,報告数を増やす取り組みに対するアンケート調査結果
富田 文子百田 浩志関谷 晃一
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2025 年 74 巻 1 号 p. 147-153

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抄録

近年,臨床現場においてインシデント報告活動の活性化は,医療の安全性向上に重要であることが多く報告されている。しかし,国内外において臨床検査技師の業務に関連して発生するインシデント,アクシデント件数についての報告はほとんどなされていないのが現状である。そこで,全国の臨床検査室を保有する済生会医療施設での実態をアンケート調査し報告数を把握するとともに,報告を増やす取り組みや報告後の改善対策の取り組みについて調査を行った。76施設中71施設から回答を得た。ヒヤリ・ハット/インシデント/アクシデント合計報告数の最大値は536件,最小値は0件であった。検査技師一人あたりの報告数最大値は32.3件であった。報告数を増やす取り組みとして,報告の重要性の意識づけや報告内容の共有,報告しやすい環境整備,報告数の目標値設定などが行われていた。報告後の取り組みは,関連部門スタッフへの注意喚起,インシデント事例に関する手順書・作業書の変更や作業環境の調整,インシデント実施者への注意,インシデント事例に関する教育内容の見直しの順に多かった。インシデントとヒヤリ・ハット報告数に正の相関を認めた。報告数を増やす取り組みと報告数の増加には関連性がみられなかったものの,インシデント報告後の改善対策項目数と報告数の増加には関連性を認めた。報告後の改善活動の取り組みによる現場への良い影響が報告数の増加につながっていると考えられる。

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