2025 年 74 巻 2 号 p. 293-303
人工知能技術の一つである深層学習は,人間の脳の神経回路を模した多層構造のニューラルネットワークを用いて大量のデータを学習させることで,データ中の隠れた特徴量を検出し,正確な判断モデルを生成する手法である。自動血液像分類装置には,細胞を正確に鑑別できる認識技術が要求されるが,従来の機械学習では,反応性や腫瘍性細胞に対して高い精度が得られない場合があることが報告されている。我々は血液形態検査における人工知能支援技術の有用性を明らかにするため,正常-反応性-異常リンパ球鑑別人工知能モデルを作成し,その有用性を評価した。5種のresidual neural networksを深層学習に適用した。学習用データは6,402枚の有核血球画像で構成した。学習データはデータ拡張処理を行い,転移学習とfine-tuningを行った。臨床評価の対象は,健常人25例,反応性リンパ球増多症25例,急性リンパ性白血病15例とした。Total accuracyの最低値-最高値は健常者0.9433–0.9791,反応性リンパ球増多症0.8108–0.8425,急性リンパ芽球性白血病0.8248–0.8545であり,全症例で0.8645–0.8875であった。リンパ球形態鑑別人工知能モデルは高い認識パフォーマンスを示し,本アプローチは血液塗抹標本スクリーニングにおける有用な形態鑑別支援技術と考えられた。