医学検査
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症例報告
5番染色体長腕欠失とJAK2V617F変異を有し,異なる臨床像を呈した2症例
桜田 菜奈築地 秀典宮﨑 勢子百田 裕香松下 義照飯野 忠史吉本 五一久保田 寧
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2025 年 74 巻 3 号 p. 613-620

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抄録

骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(myelodysplastic/myeloproliferative neoplasms; MDS/MPN)は,MDSとMPN双方の特徴を併せ持つ。今回,5番染色体長腕の欠失(del(5q))に加えてMPNで高頻度にみられるJAK2V617F変異を認めた2例を経験した。症例1は60歳代女性,赤血球・血小板増多で来院。血球3系統が増加し,JAK2V617F陽性であった。骨髄は過形成で,小型で低分葉核の巨核球が増加し,単独のdel(5q)を認めたが,MDSの基準に合致せず,MDS/MPNと診断した。症例2は70歳代,男性。大球性貧血で紹介されたが,軽度の血小板増多もあり,JAK2V617Fが陽性であった。骨髄は正形成で,好中球に偽Pelger核異常があり,小型で低分葉核の巨核球が増加していた。染色体検査でdel(5q)の他,複数の核型異常を認め,MDSと診断した。症例1・2とも低芽球比率と5番染色体長腕欠失を伴うMDS[MDS del(5q)]に特徴的な巨核球形態を呈し,血小板数の増加を加味するとdel(5q)の存在を疑うことは可能と考える。しかし,del(5q)以外にもJAK2V617F変異や染色体異常がある場合,末梢血所見や骨髄像がMDS del(5q)とは異なり,必ずしも定型的診断とはならない。細胞遺伝学的・分子生物学的情報の検索による適切な診断が必要である。

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