今回我々は,透徹剤であるキシレンの使用量削減と脱水不良の改善を目的に,脱水・透徹後に切片を乾燥させ封入する方法を考案した。予備実験として,通常の脱水・透徹・封入とエタノールによる脱水後に切片を乾燥させ,封入前のキシレンに浸漬後封入を行ったもので比較したところ,染色性に顕著な差異は認めなかったものの,後者は組織の一部に若干の収縮が確認された。しかし,脱水後にキシレンによる透徹を1槽行い乾燥させ,封入前のキシレンに浸漬後封入したところ収縮は確認されず,通常の方法と同等の染色性が得られた。そこで,(a)通常の脱水・透徹・封入,(b)脱水・透徹1槽後,乾燥させ封入前のキシレンに浸漬後封入の2通りにて比較検討した。各種ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックより得られた2枚の連続切片を用い,HE染色,特殊染色(色素別に10種類),免疫組織化学染色(p53)を行った。(b)はすべての染色で切片剥離はみられず,染色性も(a)と同等の結果であった。さらに,各種染色直後と6ヵ月後の染色態度を比較し退色の有無を比較したところ,(a)のベルリンブルー染色は染色態度に変化を認めたが,(b)では変化を認めなかった。今回,その他の染色では両者に顕著な差異はみられなかった。(b)の方法であれば透徹で用いるキシレン1槽で,1,000枚以上の標本作製が可能であり,使用量削減および退色の原因とされる脱水不良の改善が期待できる実用的な方法と考えられた。