2026 年 75 巻 2 号 p. 413-419
Moraxella osloensisはヒトの上気道に常在するグラム陰性球桿菌であるが,感染症の起因菌となることは稀であり,特に菌血症としての報告は限られている。今回我々は,下部胆管癌に対して胆管ステントを留置中の87歳男性に発症したM. osloensis菌血症の1例を経験した。患者は38.0℃の発熱,悪寒戦慄,腹痛を主訴に当院を受診した。基礎疾患に下部胆管癌があり,CT検査を施行したところ胆管ステントが逸脱していることが判明した。内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(endoscopic retrograde biliary drainage; ERBD)を施行し,胆管ステントを再留置後,入院となった。入院時に血液培養2セットを採取し,tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)にて治療が開始された。48時間後に血液培養2セット4本の内,好気ボトル1本からグラム不定の細菌が検出され,M. osloensisと同定された。入院後は症状軽快し,入院5日目に退院となった。本症例は胆管ステント逸脱を契機に発症したM. osloensis菌血症であり,稀少菌ではあるが免疫低下例やデバイス関連感染において鑑別すべき起因菌であることを示唆している。