日本看護科学会誌
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研究報告
術後1年までの乳がん体験者の上肢機能障害に対する主観的認知とクオリティ・オブ・ライフの関連
佐藤 冨美子黒田 裕子
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2008 年 28 巻 2 号 p. 2_28-2_36

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抄録

目的:術後1年までの乳がん体験者の上肢機能障害に対する主観的認知(SPOFIA)とQOLの関連を明らかにすることである.
方法:乳がん体験者150名(平均年齢50.7歳)を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.
結果:対象者の85.3%がSPOFIA尺度1項目以上を認知し,「腕をあげた時に腕の皮膚がつっぱる感じがする」,「触っても感じ方が鈍い部分がある」,「腕を動かすと痛い」の順に多かった.SPOFIA尺度14項目とQOLは「低い」から「かなり」の有意な負の相関がみられ(rs=−.20~−.48; p<.001~.05),特に日常役割機能(身体)および体の痛みとの相関が強かった.SPOFIAあり群はSPOFIAなし群と比較して,身体機能(p<.001),日常役割機能(身体)(p<.001),体の痛み(p<.001),活力(p<.01),社会生活機能(p<.05),日常役割機能(精神)(p<.01)が有意に低かった.
結論:乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知は,治療との関連をはじめとして壮年期女性の生活と密接に関連していることを示唆した.また,上肢機能障害とQOLとの関連の強さは,少なくとも術後1年の乳がん体験者が認知する上肢機能障害への予防改善に向けた支援の必要性を示唆した.

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© 2008 公益社団法人 日本看護科学学会
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