日本看護科学会誌
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28 巻, 2 号
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原著
  • 種吉 啓子
    原稿種別: 原著
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_3-2_11
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,摂食障害のある子どもをもつ親の行動や変化の過程を明らかにすることである.摂食障害のある子どもの父親3名,母親11名を対象に半構成的面接を実施し,得られた面接記録を質的帰納的に分析した.その結果,《仲良し家族を実践する》《変化に囚われる》《過去と決別する》《成長を積み重ねる》《腰を据える》《情報を求める》《医療とつながる》という7つのカテゴリーからなる親の適応行動過程が明らかになった.適応行動過程とは,子どもの身体的変化,人格の変化,日常生活の変化を認識し,子どもの変化を受け入れ,親自身が子どもの変化に合わせて親役割を遂行する成長過程を意味していた.その過程の中で,親の視点が過去から未来へと変化し,さらに身体的症状や拒食や過食などの外面的に見えるものから,感情や気持ちなどの内面的なものに向けられるようになり,価値観の変化や視点の広がりがみられた.親の適応行動過程を促進させることは,摂食障害のある子どもの回復を促進させることが考えられた.
研究報告
  • 松本 珠美, 奥宮 暁子, 江川 隆子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_12-2_18
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    糖尿病は生活習慣病の代表的なものであり,近年増加している糖尿病性足病変は自己管理行動によって予防できることから,フットケア自己管理行動に関する自己効力感を明らかにすることは重要である.そのため米国で開発されたFCCSの日本語版作成に取り組んだ.
    本研究の目的は12項目からなる糖尿病患者のフットケア自己管理行動に対するSelf-Efficacyを測定するツール,Foot Care Confidence Scale(FCCS)の日本語版(J-FCCS)を作成し,その妥当性と信頼性を検討することである.
    方法は,糖尿病医療に従事する専門家5名で内容妥当性を検討の後,J-FCCSの12項目を決定した.その後,A大学医学部附属病院の外来に通院中である糖尿病患者130名(有効回答数122名)を対象にJ-FCCSの妥当性と信頼性を検討した.この調査は大阪大学医学部倫理委員会の審査を受けている.
    その結果,因子分析で1因子が抽出され,基準関連妥当性の検討では既存のツールであるSelf-Efficacy of Health Behaviorとの相関を求め,結果は0.34であった.内的整合性は,折半法(0.87)とCronbach's α係数(0.95)で検討した.
    これらから,Jananese-Foot Care Confidence Scaleは糖尿病患者のフットケア自己管理行動におけるSelf-Efficacyを測定するツールとして使用可能であると考える.
  • 石山 香織
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_19-2_27
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:広汎子宮全摘術後患者12名と準広汎子宮全摘術後患者10名を対象として,患者が体験する排尿障害の症状とその経過,その症状に対する対処方法を明らかにすることである.
    方法:患者に半構成的面接の後,排尿障害の症状とその症状に対する対処方法を各々カテゴリー化した.症状の経過は,症状の内容,頻度,パターンを図示した.
    結果・考察:尿意に関する症状として『尿意の欠如』『尿意の鈍麻』『尿意に代わる感覚』,尿排出に関する症状として『排尿困難』『遷延性排尿』『尿線途絶』『苒延性排尿』『残尿』,およびその他の症状に分類された.尿意および尿排出に関する症状は時間経過とともに軽減したが,広汎子宮全摘術後は準広汎子宮全摘術後と比較して自然排尿確立後もこれらの症状が継続している者が多かった.患者は【排尿のタイミングをとる】【排尿時に腹圧をかける】等の対処方法を用いていたが,なかには合併症を招く可能性のあるような注意を要する対処方法もみられた.
    結論:排尿障害に対する現在の看護介入は自然排尿の確立が重視されているが,自然排尿が確立したとしても,広汎子宮全摘術後患者に対してはより適切かつ具体的な指導の検討の必要性および長期間における継続的な看護介入の必要性が示唆された.
  • 佐藤 冨美子, 黒田 裕子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_28-2_36
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:術後1年までの乳がん体験者の上肢機能障害に対する主観的認知(SPOFIA)とQOLの関連を明らかにすることである.
    方法:乳がん体験者150名(平均年齢50.7歳)を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.
    結果:対象者の85.3%がSPOFIA尺度1項目以上を認知し,「腕をあげた時に腕の皮膚がつっぱる感じがする」,「触っても感じ方が鈍い部分がある」,「腕を動かすと痛い」の順に多かった.SPOFIA尺度14項目とQOLは「低い」から「かなり」の有意な負の相関がみられ(rs=−.20~−.48; p<.001~.05),特に日常役割機能(身体)および体の痛みとの相関が強かった.SPOFIAあり群はSPOFIAなし群と比較して,身体機能(p<.001),日常役割機能(身体)(p<.001),体の痛み(p<.001),活力(p<.01),社会生活機能(p<.05),日常役割機能(精神)(p<.01)が有意に低かった.
    結論:乳がん体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知は,治療との関連をはじめとして壮年期女性の生活と密接に関連していることを示唆した.また,上肢機能障害とQOLとの関連の強さは,少なくとも術後1年の乳がん体験者が認知する上肢機能障害への予防改善に向けた支援の必要性を示唆した.
  • 山本 則子, 岡本 有子, 辻村 真由子, 金川 克子, 正木 治恵, 鈴木 みずえ, 山田 律子, 鈴木 育子, 永野 みどり, 緒方 泰 ...
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_37-2_45
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者訪問看護の質指標(16領域483指標)開発の一部として,全国の訪問看護ステーションで働く看護師を対象に,指標に関する実践の自己評価や指標についての意見を調査した.
    方法:全国5,322カ所の訪問看護ステーションに10,644通の調査票を郵送し回答を得た.
    結果:回答は3,068通(29.7%)あった.全領域で平均7割程度の指標が実施していると回答されていた.指標への「はい(=実施している)」という回答率は摂食・嚥下障害ケアや口腔ケアが低く,清潔ケア等が比較的高かった.情報収集,精神的支援,医師への報告など侵襲が少なく病棟でも一般的なケアは「はい」の回答率が高く,判断を伴うアセスメント,学習を要する特殊な技術の提供やケア実施後の評価は「はい」の回答率が低かった.全領域で「訪問看護で必要な項目が網羅されている」という意見が7割以上得られた.
    結論:開発中の訪問看護質指標では,指標ごと,領域ごとに実施率にある程度のばらつきがみられた.今回の結果を参考にしつつ質指標の開発を進めていきたい.
  • 小楠 範子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_46-2_54
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,回想を聴くことで高齢者の終末期の意思がどのような形で表出されていくのかに焦点を当て記述することである.研究参加者は,A特別養護老人ホームの5名の女性高齢者である.研究者は,研究参加者と1人当たり3回,回想を中心とした対話を行った.
    対話記録を分析した結果,家族,特に“子ども”をキーワードに人生を回想する高齢者の姿が見えてきた.そして,それぞれのテーマで人生を回想した後,高齢者はごく自然に自分の人生の終わりについても語ることが明らかとなった.高齢者の語りからは,食べられなくなった時を死が近いサインとして,静かに受け止めようとしている姿がみえてきた.高齢者はまた,最期まで“ひと”とのつながりを求めていることが明らかとなった.
    回想を中心とした対話それ自体に高齢者の存在を自他ともに認めるケアの側面があり,そこにはその高齢者なりの最期までの生き方の望みが表現され得ることが示された.
  • 古屋 肇子, 谷 冬彦
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_55-2_61
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,病棟看護師(N=242)のバーンアウト生起から離職願望に至るプロセスモデルの検討を,Amos 5.0により共分散構造分析で行った.調査は,自尊感情尺度,絶望感尺度,バーンアウト尺度(Maslach Burnout Inventory: MBI),離職願望尺度の4尺度からなる質問紙を用いた.5つの構成概念(自尊感情,絶望感,情緒的消耗感,脱人格化,離職願望)から構成されるモデルの適合度指標はいずれも十分に高かった.看護師のバーンアウトは,自尊感情の低下と看護職に対する絶望感の高まりにより,情緒的消耗感と脱人格化という形で生起した.さらに,脱人格化の進行により看護師の離職願望が高まることが示唆された.
総説
  • 大島 浩子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 総説
    2008 年 28 巻 2 号 p. 2_62-2_69
    発行日: 2008/06/20
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:脳卒中患者におけるNeglectと機能的予後との関連について,海外文献の知見を整理し,患者の予後とNeglectの関連を明らかにし,患者の看護ケアへの示唆を得ること.
    方法:MEDLINE, PsycINFO(収載:1968年~2006年)をデータベースとし,キーワード,stroke, neglect,functional prognosisを用いて収集した23観察研究の文献について,整理し検討した.
    結果:文献は「損傷大脳半球部位により,左大脳患者と右大脳患者に分けた群間比較」と「Neglectを有する右大脳患者に焦点を当てた」予後に関する文献に分類された.右大脳患者は左大脳患者より機能的予後が悪く,Neglect発症後から慢性期においても日常生活活動・セルフケア能力,リハビリテーションへのリスク因子であることが示唆されたが,Neglectが患者の日常生活に具体的どのように影響するかについての関連は明らかではなかった.
    結論:Neglectは右大脳患者の日常生活活動やセルフケア能力へのリスク因子である.今後は,Neglectによる具体的な生活障害を検証しケア方法の確立を行うとともに,看護においても神経心理学的評価方法の活用可能性の検討と標準化を行うことの必要性が示唆された.
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