2021 年 41 巻 p. 876-884
目的:中堅期の市町村保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスと影響要因を明らかとする.
方法:中堅期の市町村保健師7名を対象に半構造化面接を行い,複線径路等至性モデリングの手法を用いて分析した.
結果:中堅期保健師の職業的アイデンティティの形成プロセスは「自分らしさ発揮までの焦燥期」「保健師としての自信の獲得期」「キャリア移行に対する応変期」の3つの時期に区分された.彼らは力量不足に焦りながらも周囲のサポートを得て,住民との関わりを重ねることによって保健師としての一定の自信を獲得していた.その後,環境や役割等が変化しても,価値観や意識の変容を図りながら,移り変わる状況に対峙していくことで中堅として成長していた.同時に中堅職員と一保健師の間での役割葛藤も抱えていた.
結論:中堅期保健師の職業的アイデンティティの向上には,役割葛藤に対するサポート体制の強化が重要であることが示唆された.