2025 年 45 巻 p. 267-277
目的:本研究の目的は,幼少期に保護者から虐待を受け,成人期に精神疾患とともに生きる当事者が,自身のライフストーリーをどのように語り再解釈しているかを解明することである.
方法:対話的構築主義を基盤としたライフストーリー研究を用い,3名に非構造的インタビューを3回行い,逐語録を「ストーリー領域(story realms)」と「物語世界(tale worlds)」の2つの位相に着目して分析した.
結果:否定的体験の中でも肯定的要素を見いだしながら自己理解を深める過程が示され,再解釈による回復と成長の可能性が確認された.チャイルド・マルトリートメント経験と精神疾患をめぐる語りは一面的に捉えきれない複合的な意味づけを含んでいた.
結論:当事者は過去のトラウマを病理のみで見るのではなく,多面的な語り直しを通じて新たな意味を再構築していた.包括的アプローチに基づく支援の必要性が示唆される.