抄録
薬剤漏出に対する処置として, 罨法は日常的に用いられているがその効果を裏づける科学的な実証データが不足しているのが現状である. そこで本研究では, 薬剤漏出に対する罨法の有効性を明らかにすることを目的に実験動物を用いた基礎的研究を実施した. 起炎性薬剤として知られているジアゼパム注射液 (セルシン®) を使用し, ラットの背部皮膚に漏出後, 罨法を30分間施行した. ラット皮膚の表面を, 21±1℃に維持したものを冷罨法, 41±1℃に維持したものを温罨法とした. 罨法後4時間目と8時間目に, 肉眼的観察と組織学的検索を行った.
その結果, 肉眼的観察においては, 罨法による作用は認められなかった.組織学的検索によって, 冷罨法を行うことで皮下組織の浮腫や皮下組織内への炎症性細胞の浸潤が軽減することが明らかになった. また, 温罨法を処置した部位では, 皮筋内および皮下組織内への炎症性細胞の浸潤が広範囲に認められた. 以上のことより, 薬剤漏出時の処置として冷罨法は有効であり, 温罨法は漏出病巣を悪化させることを裏づける実証データを得ることができた.