におい・かおり環境学会誌
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特集(食品についての嗅覚官能検査・評価)
食品の苦情対応における異臭検査について
髙谷 智之加藤 宏明氏田 勝三
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2014 年 45 巻 5 号 p. 351-371

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抄録

食品の異臭苦情における対応の特徴は,消費者が感じた「におい」を,的確に現物で保持し,その表現を伝え,現物から感じ取って評価し,それを関係者が共有して,さらには検査結果により裏付けることであるといえる.そして,異臭検査においては,個々の物質における嗅覚閾値や分析機器の検出感度によって,得られる結果が制約される場合があるため,これらの結果を総合的に判断して原因の究明にあたる.異臭検査への嗅覚官能検査導入には,迅速に異常性を判断できる,的確に異臭原因物質の推定・絞り込みができる,高感度に検知できる場合が多い,という3つのメリットがある.嗅覚官能検査の導入にあたっては,パネル統括者の選任,運営ルールの整備,パネルの選定を行う必要があり,さらに,継続的なパネル育成と嗅覚トレーニングを行う.こうした異臭検査能力の向上は,苦情対応に関わる部署間の連携を円滑にし,さらには対外的な納得性を高めることにもつながる.嗅覚官能検査の結果を受けて,原因物質をさらに特定する場合には機器を用いた臭気検査を行うが,日々の苦情品検査において求められる「迅速」「簡単」「的確」という要件に合致した手法をまず選択する.そして,機器分析においては,こうした要件に合致した有効なツールとして,「SPME」「GC/MS」「におい嗅ぎGC」がある.しかし,これらの手法でどのような物質も検出できるというわけではなく,嗅覚官能検査ではにおいを検知できて,機器分析では検出できない場合もある.異臭となっている物質の種類や含まれている濃度,および,その物質に対する嗅覚閾値と機器の感度などの要因により,異臭検査結果のパターンは幾つかに分かれ,さらに,食品特性や香気成分等の影響も受ける.食品の異臭苦情品検査において様々な場合に共通する重要なことは,嗅覚官能検査で異臭のターゲットを的確に捉えた上で機器分析を行い,全ての結果を総合的に判定することである.

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© 2014 (社)におい・かおり環境協会
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