抄録
中小企業では、労災発生率が高いので、本来、規制を強化すべきだが、様々な資源が乏しいので、むしろ規制は緩和されてきた。労災保険特別会計を用いた技術的、財政的支援などが講じられてきたが、あまり奏功していない。経験豊かな労災防止指導員による指導助言制度も、安全衛生に積極的に取り組む企業の税金を優遇する制度も奏功せず、廃止された。企業の積極的な取り組み状況を行政が公表するあんぜんプロジェクトも、十分な数の参加企業を獲得できていない。よって、考えられる対策として、第1に、労災や健康障害を発生させた企業の安全衛生担当者への講習指示制度の強化拡充、第2に、仕事の注文者に受注者の人員体制や安全衛生への取り組みを評価させる仕組みと、それを支援するための認証制度の導入、第3に、AI による安全衛生情報の提供システムの整備、第4に、ベンチャー事業に対しては、ヒト、カネ、事務所、取引先などの経営資源づくりを支援すると共に、健康管理や安全衛生管理を行わせる施策などが挙げられる。いずれにせよ、中小企業では、経営の安定が安全衛生に直結するので、経営支援と安全衛生政策をセットで進める必要がある。