質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
「起き上がるカブトムシ」の観察
環境-行為系の創発
佐々木 正人
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 10 巻 1 号 p. 46-62

詳細
抄録

床の上に仰向けに置いたカブトムシが,様々な物など,周囲の性質を使って起き上がる過程を観察した。床の溝,タオル,うちわ,鍋敷,チラシ,爪楊枝,リボン(細,太),ビニルヒモ,ティッシュ,T シャツ,シソの葉,メモ用紙,割り箸,フィルムの蓋を起き上がりに利用する虫の行為が記録された(図 1~17)。周囲の性質で起き上がりに利用されたのは,物の網目状の肌理,床とその上に置かれた物の縁・隙間,穴上の陥没,抱え込んで揺らすことのできる物,床とひも状,棒状,円形状の物がつくる隙間であった。これらの観察をまとめるとカブトムシの起き上がりが,1)「地面-単一の脚」(図 18a),2)「変形する物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図18b),3)「固い物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図 18c)の 3 種の環境-行為系の創発として記述できることが明らかになった。

著者関連情報
© 2011 日本質的心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top