質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
知的障がいのある子どもを緊急に親元から離すプロセスとは
在宅ケアを望んでいた親の施設利用に焦点を当てて
山田 哲子
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2015 年 14 巻 1 号 p. 128-145

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抄録
日本では,成人した知的障がい者の7割以上が家族と共に暮らしており,「親亡き後」を視野に入れた家族支援が益々重要になっている。本調査では,緊急に知的障がいのある子どもを施設に預けざるを得なくなった母親4名に焦点を当て,半構造化面接によるインタビュー調査を行い,複線径路・等至性モデル(TEM)にて分析した。その結果,プロセスは【1.緊急期】,【2.葛藤期】,【3.安定期】に分かれた。母親は子どもを施設に預けると,様々な心理的困難を経験していた。その中で,母親が施設に面会に行き,子どもに良い変化が起きたと気付くことで安定していく径路を見出した。一方,自分がケアを担えないから子どもの施設利用も仕方がないと諦める径路も存在した。子どもを施設に預けるという出来事に対する母親の評価には,施設生活をする子どもの様子を親がどう捉えるかが影響していた。また,面会に行かない母親は,施設の様子を目にしないことで母親が既に持っていた施設の悪いイメージから子どもの施設生活に対して否定的になる危険性が示された。これらのことから,在宅ケアを希望している家族には緊急事態に備えた支援が,利用直後の親にはその心理面のケア,そして子どもの施設移行が安定した後も親の感情面の傾聴や親亡き後に備えた支援が家族に対して求められる。
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© 2015 日本質的心理学会
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