質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
新人看護師が複数の患者を同時に受け持つ体制下で直面する多重課題対応不全を生み出す因子
KJ法を活用した新人看護師の面接内容の構造化から
今井 多樹子岡田 麻里高瀬 美由紀
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2019 年 19 巻 1 号 p. 141-157

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抄録
本研究では,新人看護師が複数の患者を同時に受け持つ体制下で直面する多重課題対応不全を生み出す因子を明 らかにした。新人看護師 7 名を対象に半構造化面接を行い,KJ 法を活用して構造化した。結果,新人看護師の 多重課題対応不全を生み出す構造は【過去の実習姿勢のまずさ】と【複数患者受け持ちによる業務・課題の同時 多発への対応困難】の狭間で深刻な自立困難感に陥っているという感触を主軸としたものであった。【過去の実 習姿勢のまずさ】は,未だに【勉強が上手くできない】状況を生み,知識・理解の不足は【病態と症状,治療が 繋がらない】状況を惹き起こしていた。臨床では【専門性・個別性の障壁】に突き当たり,複数の複雑な患者を 受け持つ上で弊害となる【看護業務優先度の判断困難】をもたらしていた。さらに,病棟内では,【人間関係の 不全】【報告の不手際】にも悩まされ,自身の感じている不全感を解決する手段・方法においても未熟さを克服 するのが困難な状況にあった。特に重要な課題として,基礎教育では実習段階で(つまり,学生のうちに)学修 姿勢を確立させなければならないことが考えられた。
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© 2019 日本質的心理学会
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