質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
1〜2歳児のごはんをすくう行為の分析
食べ物の変形と食事道具の利用の観点から
青木 洋子
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2024 年 23 巻 1 号 p. 59-77

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抄録

本研究はスプーン食べ期の保育園1 歳児クラスの子ども2 名の食事場面を縦断観察し,スプーン操作の中でも特に難しい「食べ物を食具に載せる」操作を生態心理学的観点から分析した。「食べ物を食具に載せる」操作は,主に食べ物の変形に関連する「食べ物を食具に載せる前の調整タスク」と,食器とスプーンの接触様態が関連する「食べ物を食具に載せるタスク」に分けて分析した。分析対象の食べ物は,保育園でよく提供される主食のごはんであった。分析の結果,対象児は食べ物の粘性による分割しにくさには対処できたが,粒状で食器内に散らばるとかき集めるのが困難なこと,予期性が及ぶと仮定されるのが「一口」の範囲内であること,食器とスプーンを組み合わせて食べ物を押さえるアフォーダンスを作り出す際,身体の可動域の点から食器の手前もしくは左側が使いやすい位置となることが推測された。また,運動発達の観点からスプーン操作を研究したコノリーとダルグレイッシュ(Connolly & Dalgleish, 1989)が最も高度なすくい方としている「手首の回転」は,環境との調整の観点からはスプーンのボール部の丸みと食器の面を曲線状に沿わせ,スプーンの上の食べ物と食器の面の接触面積を増加させて「食べ物を食具に載せる」ゴールをより確実に遂行する動きと解釈された。

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© 2024 日本質的心理学会
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