抄録
現在,日本におけるスクールカウンセラーは非常勤型が中心であり,常勤型スクールカウンセラーが活動しているのはごく一部の自治体の公立学校と,私立学校のみである。本研究は常勤型スクールカウンセラーの活動の有効性と課題を検討することを目的とし,私立学校の常勤型スクールカウンセラーにインタビュー調査を実施した。インタビュー・データをもとに修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行い,常勤型スクールカウンセラーが活動を形作るプロセスを検討したところ,35の概念と7のカテゴリー,9のサブカテゴリーが生成された。結果から,常勤型スクールカウンセラーの活動には長所もある一方で「外部性・中立性確保の困難さ」「教員力動に巻き込まれる」「守秘義務の扱い」「任されすぎる」「多忙・負荷の大きさ」「専門性の揺らぎ」といった課題があると示唆された。しかし常勤型スクールカウンセラーは基盤作りや専門性の主張と説明を行うことでこの課題に対応し,専門性を確保し,各学校のなかで活動を方向づけていた。今後常勤型スクールカウンセラーの活動が全国的に広がっていくためには,多職種連携においてこのような専門性の主張と説明の力を持つスクールカウンセラーを育成することが必要であると考えられる。