第四紀研究
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論説
千葉県八千代市新川低地における完新世の植生変遷と稲作の開始時期
稲田 晃齋藤 岳由楡井 尊西村 祥子大浜 和子金子 静子金子 陽子島村 健二志水 里美
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2008 年 47 巻 5 号 p. 313-327

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抄録

関東平野南東部,千葉県八千代市新川低地の宮内で得たボーリングコア試料の花粉分析と珪藻分析によって,当地域における約8,000 cal BP以降の植生と堆積環境の変遷を明らかにした.
約8,000 cal BP以降,低地には古鬼怒湾が進入し,約4,000 cal BPまでその海岸線は宮内周辺にあったが(MyD-i~iii),以後退いて低地は湿地化(MyD-iv)した.この間における台地と段丘崖の植生変遷は,コナラ亜属を主とする落葉広葉樹林期(MyP-I),スギ林拡大期(MyP-II),マツ二次林拡大期(MyP-III)に区分される.MyP-IとMyP-IIとの境界は約4,000 cal BP, MyP-IIとMyP-IIIとの境界は早くとも約1,300 cal BP以降である.一方,低地では約4,000 cal BP以降,ハンノキ属(おそらくハンノキ)-トネリコ属(おそらくヤチダモ)-クロウメモドキ科湿地林(約4,000~3,700 cal BP, MyP-IIA)から,ハンノキ属湿地林とニレ属-ケヤキ属(おそらくケヤキ)林(約3,700~2,500 cal BP, MyP-IIB)を経て,イネ科-カヤツリグサ科群落を伴う池沼(約2,500~1,300 cal BP, MyP-IIC)になった.この後,約1,300 cal BP以降のある時期から水田となった(MyD-v, MyP-III).
また,約3,700 cal BP以降の地層からは,少量のソバ属花粉を伴ってイネ属花粉が連続出現し,複維管束亜属を主とするマツ属花粉もやや高率で出現する.このことは約3,700 cal BP以降,新川低地の宮内周辺やその上流部では稲作がすでに始まり,台地を中心としてマツ二次林が部分的に成立していたことを示している.

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© 2008 日本第四紀学会
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