第四紀研究
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海産パリノモルフ化石群集からみた対馬・三根湾における完新世の沿岸海洋環境の変遷
松岡 數充
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1992 年 31 巻 3 号 p. 147-157

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抄録
完新世における対馬周辺の沿岸海洋環境復元のために, 渦鞭毛藻シストを主とする海産パリノモルフ分析を, 上対馬三根湾奥部の水深-8.5mの海底から採取されたボーリングコア試料について行なった. 堆積物は多くの貝殻破片を含む暗灰色砂質から粘土質シルトであり, 14C年代測定の結果, -4mでは1,100±110yrs BP, -16mでは7,150±320300yrs BPであった. 渦鞭毛藻シストをはじめ種々の海成パリノモルフが検出された. このうち, 渦鞭毛藻シストは主に Spiniferites bulloideus, Spin. cf. delicatus などのゴニオラックスグループ, Brigantedinium spp., Selenopemphix quanta, Votadinium carvum, Vot. spinosum などのプロトペリディニウムグループおよび Polykrikos schwartzii などのギムノディニウムグループから構成されている. 渦鞭毛藻シストや小型有孔虫ライニングの産出状況から3つの群集が認められ, これらは古い順に, 初期の海進, Climatic Optimum, 後期の海退という沿岸海洋環境をそれぞれ反映している.
対馬北西部沿崖における以上のような沿岸海洋環境および前期縄文時代 (約6,000年前) の数ヵ所の考古遺跡は現在の平均海水面より-1~-2mに位置している事実から, この地域において Climatic Optimum での海水面は現在のそれ以上にいたらず, この島の西岸は中期完新世以降沈降し続けていると考察した.
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