第四紀研究
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31 巻, 3 号
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  • 佐瀬 隆, 徳永 光一, 石田 智之
    1992 年 31 巻 3 号 p. 131-146
    発行日: 1992/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    十和田火山東方域と岩手火山東方域に位置する累積テフラ層の断面を対象として, 新しい手法である土壌孔隙造影法を用いて, 根系状孔隙の3次元的形態と分布深度を調べた. また, 同時に実施された植物珪酸体分析の結果も総合して, 根系状孔隙の成因および風成火山灰層の堆積環境について考察した.
    いずれの地域においても, 累積テフラ層の最下部層準まで厚さ10m以上にわたって根系状孔隙が発達し, かつ植物珪酸体が検出された. しかし, 同地域に分布する火山泥流堆積物や花崗岩の深層風化層では, 地表履歴を持つ表層部を除いては根系状孔隙が認められず, また植物珪酸体はすべて層準において検出されなかった. これらの事実は, 根系状孔隙は植物群落の地下器官によって生成されたことを示唆する. また, 累積テフラ層の断面において, 深層まで普遍的に根系状孔隙が認められたことは, 風化火山灰層が植被の存在のもとでテフラの堆積とその土壌化が平行して進行し, 形成されたことを示している.
  • 松岡 數充
    1992 年 31 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 1992/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    完新世における対馬周辺の沿岸海洋環境復元のために, 渦鞭毛藻シストを主とする海産パリノモルフ分析を, 上対馬三根湾奥部の水深-8.5mの海底から採取されたボーリングコア試料について行なった. 堆積物は多くの貝殻破片を含む暗灰色砂質から粘土質シルトであり, 14C年代測定の結果, -4mでは1,100±110yrs BP, -16mでは7,150±320300yrs BPであった. 渦鞭毛藻シストをはじめ種々の海成パリノモルフが検出された. このうち, 渦鞭毛藻シストは主に Spiniferites bulloideus, Spin. cf. delicatus などのゴニオラックスグループ, Brigantedinium spp., Selenopemphix quanta, Votadinium carvum, Vot. spinosum などのプロトペリディニウムグループおよび Polykrikos schwartzii などのギムノディニウムグループから構成されている. 渦鞭毛藻シストや小型有孔虫ライニングの産出状況から3つの群集が認められ, これらは古い順に, 初期の海進, Climatic Optimum, 後期の海退という沿岸海洋環境をそれぞれ反映している.
    対馬北西部沿崖における以上のような沿岸海洋環境および前期縄文時代 (約6,000年前) の数ヵ所の考古遺跡は現在の平均海水面より-1~-2mに位置している事実から, この地域において Climatic Optimum での海水面は現在のそれ以上にいたらず, この島の西岸は中期完新世以降沈降し続けていると考察した.
  • 三田村 宗樹
    1992 年 31 巻 3 号 p. 159-177
    発行日: 1992/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    京阪奈丘陵の大阪層群は全層厚300m以上であり, 層相によって下位より登美ヶ丘累層 (鹿畑礫層・東畑互層), 田辺累層 (水取礫層・柘榴互層), 精華累層, 招提累層に区分できる. 挾まれる火山灰層のうち, 下位より北谷, 東畑, 普賢寺, 同志社, 煤谷I, 煤谷II, ピンク, アズキ, 八町池, カスリの各火山灰層が, 海成粘土層はMa1, Ma2, Ma5, Ma6, Ma8層が, それぞれ鍵層として有効である. 本地域には, 大阪層群の標準層序のうち, 三ツ松火山灰層のやや下位よりMa8層のやや上位の層準が分布している. 本地域は大阪層群の地質構造によって, 普賢寺撓曲以南, 交野断層-長尾撓曲以北, 交野断層-長尾撓曲と尊延寺撓曲間の3地域に区分され, 交野断層-長尾撓曲は, 大阪層群の堆積盆地としての奈良盆地と大阪盆地を境する主要構造である.
  • 小倉 博之, 吉川 周作, 此松 昌彦, 木谷 幹一, 三田村 宗樹, 石井 久夫
    1992 年 31 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 1992/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大阪平野の上町台地南部の台地構成層中に挾在する火山灰・含有化石の記載・分析ならびに有機物の14C年代測定をおこなった. その結果, 中位段丘層相当層の上町層上部から北花田火山灰, 吾彦火山灰を発見し, それぞれ広域火山灰のK-Tz, Aso-4に対比し, 上町層上部の堆積時期を知る手がかりを得た.
    さらに, 上町層を不整合に覆う常盤層の存在を指摘し, 平安神宮火山灰が挾在すること, その直下から23,400年BPの14C年代測定値を得たことから, 常盤層を低位段丘層に対比した. 以上より, 従来中位段丘面とされていた本地域の台地面は, 常盤層の堆積面, すなわち低位段丘面であることが明らかになった.
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