第四紀研究
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伊豆半島,天城カワゴ平火山の噴火と縄文時代後~晩期の古環境
嶋田 繁
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2000 年 39 巻 2 号 p. 151-164

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抄録

天城カワゴ平火山は,伊豆半島の天城火山北西部に位置する単成火山である.噴出物層序から,同火山の噴火活動は噴火様式の異なる4ステージ(ステージI:火砕サージ噴火→ステージII:プリニー式噴火→ステージIII:火砕流噴火→ステージIV:溶岩流出)に区分できる.このうち,ステージIIで噴出した大量の降下軽石(KGP)はおもに東風により西へ吹送されたが,一部は火口の北または北東~南東方向にも認められ,全体の分布域は伊豆~東海地方のほか南関東,中部山岳地域,近畿地方などの広域に及ぶ.その分布には偏西風の影響がほとんど認められないことから,噴火は夏季に生じた可能性が示唆される.またステージIIIでは,火砕流が天城火山山麓の谷を流下したが,これと同時に灰かぐらが発生し,火砕流の流下域やその西側に細粒火山灰層が厚く堆積した.
カワゴ平火山の噴火年代については,14C年代値,周辺地域のテフラ層序,KGPと考古遺物との層位関係から,3,060~3,190yrs BPと推定した.この噴火と同時期(縄文時代後~晩期)の伊豆半島や駿河湾岸周辺の沖積低地では,潟湖の埋積が進み,沼沢地・湿地が発達していた.特に静清平野では,KGPを挾む泥炭層が低地のほか,扇状地末端などの微高地上にも分布することから,KGP降下期の同平野では広域に沼沢地・湿地が形成されていたと推定される.

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