第四紀研究
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39 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 青木 かおり, 新井 房夫
    2000 年 39 巻 2 号 p. 107-120
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,三陸海岸気仙沼沖から採取された海底コアKH94-3,LM-8に介在している14枚のテフラについて,火山ガラス・斑晶鉱物の屈折率測定と火山ガラスの化学分析を行い,同定を試みた.その結果,LM-8コアには東北地方に分布する火山(特に十和田火山)から供給されたテフラ以外に,九州(姶良Tn,阿蘇4)と北海道起源(支笏第1)の広域テフラが介在することがわかった.
    また,支笏第1テフラと十和田八戸テフラは降下火山灰と漂流軽石からなることがわかった.支笏第1テフラの漂流軽石は今回はじめて見つかったものである.
    さらに,14枚のテフラが酸素同位体比層序のどの層準に位置しているのかを明らかにした上で,噴出年代を推定し,それらと陸上試料で報告されている14C年代値を暦年代に補正した値とを比較した.本研究によって,東北日本周辺海域における過去9万年間の標準的なテフラ層序の一つを確立することができたといえよう.
  • 北海道南西部における材化石および花粉化石からの復元
    川村 弥生, 紀藤 典夫
    2000 年 39 巻 2 号 p. 121-138
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北海道南西部の森町濁川周辺に分布する最終氷期末期(約12,000yrs BP)の濁川テフラに埋積された材化石群集および花粉化石から,植生を復元した.濁川テフラ内やその直下から得られた炭化材・材化石は,いずれもモミ属が最も多く,次いでトウヒ属,カバノキ属,カラマツ属,バラ属が産出した.これまでの大型植物化石の研究から,モミ属はトドマツ,カラマツ属はグイマツであると思われる.樹木花粉組成は,主としてモミ属・トウヒ属・カバノキ属からなり,ほかにマツ属,ハンノキ属,クマシデ属,ニレ属を伴う.主要花粉の組成は,材化石の組成とほぼ一致する結果が得られた.また,草本花粉・胞子の組成はシダ植物の胞子が多く,ヨモギ属やイネ科,カヤツリグサ科の花粉などを伴う.材化石および花粉化石から復元される濁川盆地周辺の植生は,森林においてはモミ属が卓越し,トウヒ属・カバノキ属を混じえ,ハンノキ属・バラ属を伴っている.また,林床や森林周縁においてはシダ植物が優占し,ヨモギ属やイネ科,カヤツリグサ科の草本が生育していたと推定される.最終氷期末期の濁川周辺のトドマツが卓越する植生は,最終氷期最寒冷期より温暖な気候条件を反映したものであると考えられる.
  • 三宅 尚, 根平 邦人, 中越 信和, 平山 貴久
    2000 年 39 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    剣山地南西部の温帯混交林域において,過去に生じた植生変化を森林土壌の花粉分析によって調査した.調査区内で採取された2地点の土壌断面には,19世紀後半,明治時代に入り行われたと考えられる大規模な森林伐採によって生じた植生変化が記録されていた.現在,この調査区はモミとミズメが優占するが,伐採の行われる以前では多様な広葉樹を交えたモミ-ツガ林であったと考えられる.2地点の土壌中の花粉分布パターンはいくつかの花粉型で大きく異なっていた.このことは森林土壌の花粉分析によって,細かい面積的スケールでの植生変化を解明できることを示唆している.
  • 嶋田 繁
    2000 年 39 巻 2 号 p. 151-164
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    天城カワゴ平火山は,伊豆半島の天城火山北西部に位置する単成火山である.噴出物層序から,同火山の噴火活動は噴火様式の異なる4ステージ(ステージI:火砕サージ噴火→ステージII:プリニー式噴火→ステージIII:火砕流噴火→ステージIV:溶岩流出)に区分できる.このうち,ステージIIで噴出した大量の降下軽石(KGP)はおもに東風により西へ吹送されたが,一部は火口の北または北東~南東方向にも認められ,全体の分布域は伊豆~東海地方のほか南関東,中部山岳地域,近畿地方などの広域に及ぶ.その分布には偏西風の影響がほとんど認められないことから,噴火は夏季に生じた可能性が示唆される.またステージIIIでは,火砕流が天城火山山麓の谷を流下したが,これと同時に灰かぐらが発生し,火砕流の流下域やその西側に細粒火山灰層が厚く堆積した.
    カワゴ平火山の噴火年代については,14C年代値,周辺地域のテフラ層序,KGPと考古遺物との層位関係から,3,060~3,190yrs BPと推定した.この噴火と同時期(縄文時代後~晩期)の伊豆半島や駿河湾岸周辺の沖積低地では,潟湖の埋積が進み,沼沢地・湿地が発達していた.特に静清平野では,KGPを挾む泥炭層が低地のほか,扇状地末端などの微高地上にも分布することから,KGP降下期の同平野では広域に沼沢地・湿地が形成されていたと推定される.
  • 松浦 旅人
    2000 年 39 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    山形県北部の尾花沢,新庄,向町盆地周辺において,黒雲母,カミングトン閃石を含む緑色粗砂状のテフラ(毒沢テフラ,Dks)が分布している.Dksに含まれる火山ガラスの屈折率nは1.495-1.498,カミングトン閃石の屈折率n2は1.665-1.671,mg値は0.568-0.571を示す.Dksの噴出源は,層厚変化から判断して肘折カルデラ-月山-葉山を結ぶ三角地帯,またはその南西方向に位置すると推定される.Dksの噴出年代は三瓶木次テフラ(噴出年代100ka前後)の直上にあるため,100kaよりやや新しい.宮城県北部築館周辺でみいだされている北原テフラは,Dksと類似した特性を有しており,両者の対比は今後の課題である.
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