抄録
世界的に脱ガソリン車の政策が求められており,電動車の開発が急速に進められている。それに伴い,電動車特有のリスク評価が求められている。電動車の1つである水素を燃料とした燃料電池自動車(FCV)は,火災事故時に高圧水素を緊急排出するため,数メートル規模の水素噴流火炎が瞬間的に形成される。瞬時の大熱量が発生し,従来のガソリン車とは異なるリスク評価が必要である。
本研究では,FCVの火災事故時の熱傷リスクを検討するため,人体の皮膚を模擬した材料やヒトに近いブタ皮膚に熱を与えた熱傷の模擬実験を実施し,模擬皮膚の温度変化に対する実験結果と熱伝導の数値シミュレーションを比較する。また,ブタ皮膚の病理組織学的な熱傷様の観察を行い,熱負荷時間・温度と重症度の関連性を調査した。高温・短時間の条件では,熱傷の生じる温度が従来より高い可能性を実験により確認し,重症度の予測モデル構築の基礎データを取得した。