東アジアを研究対象とする社会-文化人類学的研究にとって、風水は最も注目を集めるトピックとなっている。日本でも、特に1990年代以降、日本、韓国、中国などを舞台として、「生きた」風水の実態が人類学者らの手により研究されてきた。しかし、東アジア各地の風水にまつわる風水の思想や実践が明らかにされてきたにもかかわらず、風水そのものの範疇を問う研究は、さして問われてはこなかった。そこで本発表では、中国広東省の東北部に位置する梅州市を例にとり、現地の風水文化を「書く」所為が、もともと現地で風水とは考えられていなかった多様な環境選択術を、風水文化という単一の範疇に編入させてきた様相を描いてみたい。