抄録
ヴァーレン・スミス著のHosts and Guests: Anthropology of Tourismが1977年に発表されて以降、「ホストとゲスト」の関係は二項対立図式では捉えきれいない可変性を有するものとされてきた。本発表の目的は「ホストとゲスト」の可変性から一歩踏み込み、その可変性から引き起こされる観光ならではの独特の現象を明るみにすることで、観光現象を文化人類学的に論じることの意義を提唱したい。具体的には、カトマンズの観光市場、タメルにおいて土産物の宝飾品を売買する小売商人(ホスト)とツーリスト(ゲスト)に着目し、「ホストとゲスト」の可変性が経済的利益を追求するような「売り手と買い手」としての立ち位置をいかに揺るがしているかを明らかにする。