抄録
社会的養護から社会に巣立つ若者に対する自立支援の充実が課題となっている.支援の継続性も含め,若者が自立に向かう過程での課題が検討されてきた.里親の意識調査から,養育困難になりがちな里子には人間関係を築くことに不器用さがあり,レジリエンスの低さも認められた. 不遇な生い立ちから情緒的絆やアイデンティティの形成に課題を残し,自己肯定感につながる生活経験の不足もあって,関係構築に困難を生じさせる傾向がある.これに対して若者自身が将来の自立を主体的に考え,具体的な対処法を学ぶレディネス教育の重要性が指摘されている.また,制度として英国のケアリーバー法は,社会全体が共同の親となって若者の自立支援を推進している.社会的共同親の理念は,社会的養護から離れた若者を排除しない包摂社会の実現に深くかかわってい る.わが国も同様の考えにたち,自立支援の1つとして重要な役割を果たしている里親制度の充実をいっそう図る必要がある.