抄録
発達障害の可能性のある児童生徒の全国実態調査で文部科学省が示した学習のつまずき チェックリストは,教育現場で簡便に活用できるアセスメントツールである.本稿では,この チェックリストの標準化を試みた.小・中学校の通常学級の児童生徒 2, 152名(通常学級群)と, 通級による指導を利用している発達障害傾向のある児童生徒 538 名(発達障害傾向群)のデータを収集した.まず通常学級群において,学習領域,学年,性別によるつまずき得点の違いを検討し た.その結果,いずれの要因も有意に影響することが示唆された.次に両群のデータから信頼性と 妥当性を検討した.Cronbach のα係数は,すべての学習領域の尺度で高い内的整合性があることを示した.また,基準関連妥当性の検討は各学習領域には相互関連性があり,注意の問題が一貫して反映されることを示した.さらに,臨床的妥当性を検討するために,発達障害傾向群を LD のある児童生徒(LD 傾向群)とそれ以外(非 LD 傾向群)に分類した.結果は,LD 傾向群は通常学 級群と非 LD 傾向群の両群に比べて,学習のつまずきが有意に大きいことを示した.これらのことは,チェックリストが児童生徒の学習のニーズを適切に反映していることを示唆している.また チェックリストの標準化は,児童生徒の学習ニーズの妥当な解釈を保障するために重要であると考えられた.