抄録
自分たちを無力化する社会環境を変革することで力を取り戻すことを望んだ障害者運動や, 嗜癖行動に対する無力さを認め背景にある自分の癖や傷つきを語り合うことが回復につながること をみいだした依存症自助グループは,当事者参画のもとで研究を推進する共同創造の嚆矢である が,そのどちらからも周縁化された当事者たちは当事者研究を実践し始めた.等身大の自己を探求 しつつ,その知見を周囲に公開することで社会変革を引き起こす当事者研究は,社会変革に先立っ て自己に関する知を必要とした可視性の低い障害者や,無力さの自覚とエンパワメントの両方が必 要な重複的逆境に置かれら依存症者にとって必要だった.同時に,共同創造が形骸化しないために は,当事者が積み上げてきた経時的な知恵の蓄積を 1 つのディシプリンとして位置付けるととも に,当事者と専門家の権力勾配を是正するために,専門家もまた自分の限界を知るために当事者研 究を行う必要がある.