抄録
読み書きの学習困難は学習障害の主要な症状であり,従来その背景要因や支援方法をめぐって多数の検討が行われてきた.学習障害には文字の読みや綴りの習得に困難が生じる発達性ディスレクシアのほか,漢字の書字に 特異的な困難を伴うタイプ,さらに文章の読解や作文の困難を主とするタイプ等があり,それぞれ背景要因や困難の顕在化する時期は多様である.また,通常の学級には,学習障害と判断されないが学習障害に類似した困難 を有する児も多くいると言われている.このため近年では,学習障害との判断に基づいた個別支援と並んで,一斉指導のなかで行う包括的な早期予防的支援の重要性が指摘されるようになった.この点については RTIモデ ルやリスクモデルに基づく研究と実践が進められ,通常学級での読み書きアセスメントや支援教材の効果が報告された.本シンポジウムは,こうした成果を広く地域の学校に資するものとするために,課題を明らかにする目 的で企画した.はじめに,リスクモデルに基づく早期予防的支援に早くから着手し,成果を示してきた東京都での取組み内容について話題提供をいただいた(中氏).次に,地方で行われた取組みの例として,鹿児島での読みのアセスメントの作成と実施について(古里氏),および,通常学級での流暢な単語読みスキルの支援の効果(塚田氏)について, それぞれ報告いただいた.その後,各報告に対して学校教育の現場の立場からコメントと指定討論をいただき,早期予防的支援を学校現場で広く行うための課題について検討した.