抄録
高等学校における通級による指導(以下「通級」)は平成30年度に制度化された.しかし,小学校,中学校,高等学校の全学校種を対象に通級の実態を検討した研究はこれまでにほとんどない.このことをふまえ,本稿では全国の小学校,中学校,高等学校の発達障害および情緒障害通級を対象に調査を行い,児童生徒の利用状況を検討した.小学校613校,中学校469校,高等学校114校から有効回答を得た.学年,性別,診断のある障害,通級形態,指導時間帯,指導内容の6つの項目について,該当する児童生徒の人数を通級担当教員の代表者に尋ねた.学校種×各項目で児童生徒数の分布状況を比較した結果,性別を除くすべての要因で,効果は大きくはないものの有意な違いがあることが示された.また,これらの違いには,通級の制度,発達課題等各学校種の特徴が影響していることが推察された.これらのことから発達障害および情緒障害通級においては,小学校,中学校と同様,高等学校でも独自の特徴があることが示唆された.