2023 年 79 巻 3 号 p. 131-139
バイノーラル録音された音源を少数のスピーカを用いて聴取者の耳元に厳密に再現するトランスオーラルシステムは,聴取者のわずかな移動によっても音場再生の効果が劣化するという問題点を有していた。本研究では,聴取者の横方向の移動に対するロバスト性向上の観点で,スピーカの配置法という幾何的な要素に着目し,二つの指向性スピーカを正中面上に並べ,かつ,スピーカの指向特性の主軸をそれぞれの耳の方向に向けて配置する指向性・正中面配置スピーカを用いたトランスオーラルシステムを提案する。スピーカを正中面上に並べる幾何的性質により,スピーカを横方向に並べる場合に比べて,聴取者の横方向の移動に対するロバスト性を高められることを理論と計算によって示す。また,スピーカの指向特性を有効利用することで,ダイナミックレンジの損失を軽減する方法についても検討を加える。