バイノーラル録音された音源を少数のスピーカを用いて聴取者の耳元に厳密に再現するトランスオーラルシステムは,聴取者のわずかな移動によっても音場再生の効果が劣化するという問題点を有していた。本研究では,聴取者の横方向の移動に対するロバスト性向上の観点で,スピーカの配置法という幾何的な要素に着目し,二つの指向性スピーカを正中面上に並べ,かつ,スピーカの指向特性の主軸をそれぞれの耳の方向に向けて配置する指向性・正中面配置スピーカを用いたトランスオーラルシステムを提案する。スピーカを正中面上に並べる幾何的性質により,スピーカを横方向に並べる場合に比べて,聴取者の横方向の移動に対するロバスト性を高められることを理論と計算によって示す。また,スピーカの指向特性を有効利用することで,ダイナミックレンジの損失を軽減する方法についても検討を加える。
日本の都市部において道路交通ノイズマップの推計にあたり多くの課題がある。その一つは広域の面的推計の際に計算負荷と推計精度がトレードオフの関係であることである。そこで本研究では,この課題に対し,日本の用途地域の異なる九つの街区において,騒音レベルを1mグリッドで計算した場合と,5mグリッドで計算した結果を29種類の内挿補間手法を用いて1mグリッドに補間した場合とを比較する。次に,内挿補間による誤差を算出し,補間手法の妥当性及びノイズマップ推計に適した補間手法について検討する。その結果,放射基底関数補間で動径基底関数をthin plateとした場合に補間精度が最も高く,90.6%の補間点で補間による誤差が±1dBに収まった。