抄録
本研究は、これまでほとんど明らかになっていなかった、創業後比較的間もない時期の企業家の労働時間について観察し、実証分析を行うものである。今回独自に実施したアンケート調査によれば、創業後3-7年の時期にあたる企業家の労働時間は、平均で週あたり66時間であるとの結果が得られた。これは、一般の男性常用雇用者に比べ約18時間長い。さらに、企業家の労働時間の決定要因を検証する労働時間関数の推定を行った結果、将来的な株式公開予定は労働時間に対して正、売上高変化率は負の影響があることなどが示された。前者は、企業家が将来の所得期待に強く動機付けられている可能性を示唆する結果であり、後者は、Fraja (1996) の起業モデルを支持するものである。なお、推定にあたっては、標準的な最小自乗法のほか、標本選択の過程を明示的に考慮したサンプルセレクションモデルの適用も行った。