東北タイにおける小規模溜池の水文立地に関する評価の方法を提示した。はじめに、研究対象地域内の選定対象農家に対して溜池の利用の実態に関する聞き取りを行い、溜池が多目的で用いられていることを確認した。中でも養魚への利用が重視されており、そのためには年間を通じて水深を1m以上に保つ必要がある。次に、集水面積の異なる条件下で、典型的な諸元を持つ溜池の水位変動に関するモデルシミュレーションを行った。この計算から、複数年での溜池の年間最低水位と集水面積との関係を得た。集水面積比(
Rca: 集水面積 / 溜池表面積)が5より小さい場合、5年間での年間最低水位が1m以下となり、通年での養魚が困難となる。
Rcaが9を越える場合、乾季であっても約500m
3が利用可能となる。衛星データを用いて各溜池の集水面積を決定し、これらの値を閾値として各溜池を3段階(A:
Rca≧9、最低水深≧1.75m、B:
Rca 5–9、最低水深<1.75m、C:
Rca<5、最低水深<1m)に評価することとした。この方法を対象地域内の180の溜池に適用したところ、約半数がA、10%がB、40%がCと評価された。これらの結果から、立地選択に起因して有効に貯留できなかった水量は、概算で全ての溜池の貯留容量の20%を越えることが示された。
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