システム農学
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システムとしての農業水路魚類生態環境の評価・表記手法の開発
島 武男田中 良和向井 章恵中 達雄
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2005 年 21 巻 2 号 p. 113-123

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抄録

近年の環境への意識の高まりを受け、2002年に土地改良法が改正された。その中で、生態系に配慮した農業水路の整備が求められている。そのような農業水路の整備を行う場合、まず農業水路の生態環境の適切な評価が必要となる。本研究では、農業水路を対象とし、魚類の生態環境を評価する手法を開発することを目的とした。そのために、農業水路を一連のシステムとしてとらえ、連結性から限定要因を評価するための評価図と、さらに農業水路を構成要素に分けて構成要素ごとに流速、材質等の特性を評価し、これらの農業水路の評価結果と魚類の捕獲調査結果を合わせて総合的に評価するための評価図を作成し、魚類に対する農業水路の生態環境の影響について検討した。流域の下流域と上流域では、気候や地形の条件が異なるため生息している魚種も異なる。また、水路システムの性格も異なるため、上下流の比較も重要となる。そこで、下流域の水路システムとして熊本県緑川流域の丹生宮地区水路を、上流域の水路システムとして通潤水路を選んだ。評価図より、水路システムの系としての評価は、自然河川との、および水路システム内でのネットワークの分断が重要な因子となることが分かった。また構成要素としての局所的な評価では流速と落差が限定要因であった。また、上中流域と下流域の水路システムを比較すると、低平地では主にポンプ等の水利施設が、中山間地では落差がネットワークの分断要因となっており、中山間地と低平地では異なる対策が必要となろう。魚類に対する農業水路生態環境に配慮した計画・設計を行う場合、まず農業水路を水路システムとして鳥瞰し、ネットワークの連結性、ハビタットの空間配置に配慮し、その後、各種魚道、魚巣ブロック、捨て石工法等の局所的な施工法を選択する手法が重要になることが示唆された。

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© 2005 システム農学会
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