システム農学
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システムシミュレーション:その問題点とアプローチ
広岡 博之山田 行雄
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ジャーナル オープンアクセス

1989 年 5 巻 1 号 p. 62-71

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抄録

システムシミュレーション法は現在農学の分野で広く用いられているにもかかわらず、モデルの不確かさや適用の限界などの問題点のため科学というよりは技術である。本研究では、システムシミュレーションの問題点を示し、それに対するアプローチを検討した。モデルの不確かさの原因として、自然界の変異、モデルパラメーターの推定誤差及びモデルの構造の曖昧さが考えられた。第一に自然界の変異は広範なデータの収集あるいはそれらの変異を量的に表す補正係数の導入によって減少できるものと思われた。第二に、大規模で複雑な生産モデルにおけるモデル出力に対するモデルパラメーターの推定誤差の影響を評価するために、感度分析とモンテカルロ誤差分析が用いられた。その結果、交互作用とモデルパラメータのバラツキの大きさの両方が考慮できるため、径路係数をモデルパラメーターとモデル出力の関係を表す尺度として用いるモンテカルロ誤差分析が最も適当であると示された。第三に、モデルの構造の曖昧さに関連して数式のあてはまりの指標として決定係数を用いることの問題点が論議され、経験式の代りに理論式を用いるシミュレーションモデルの開発が薦められた。次に確定的モデルを用いるシステムシミュレーションを方針決定の手段とする際の限界が指摘され、出力値の分散が既知の場合に限り、方針決定における代替案を客観的に評価する方法を提示した。以上示した方法はすべて完全であるとは限らず、今後、システムシミュレーションの理論的研究の必要性が示唆された。

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© 1989 システム農学会
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