抄録
NPOにおいて事業承継は喫緊の課題である。なかでも創設者の影響力が世代交代の阻害要因とされる創設者シンドロームの克服は重要課題であるが、それに対する理事会の有効性は証明されていない。そもそも、事業承継研究は、主に理事会を責任主体と想定し、実際に事業承継を動かす主体が何であるのか不問に付している。一方、ガバナンス研究では近年、多元的ガバナンス・システムの概念が提唱されているが、経験的知見が不足している。そこで本研究では、国際協力NPOのシャプラニール=市民による海外協力の会の単一事例研究を通して、事業承継を複数世代にわたって成功裡に実現させる多元的ガバナンス・システムを構成する主体や機能・メカニズムについて検討した。その結果、それは、理事会を超えた多様な主体が4つの役割(監督、支援、連携、代表)を担う「信頼に基づく統制および協働」のシステムであり、そのシステムのもと、多元的なプリンシパル関係と重層的な人材循環オープンシステム、集合的協働、多様なステークホルダーによる多元的ボイスが機能することによって複数世代にわたる事業承継が実現していることが明らかになった。